先端医療研究センター(オープン)
平成17年度 第11回プロジェクト推進委員会 議事録
日 時:平成18年3月13日(月) 午後6時〜7時35分
場 所:記念館10階 同窓会室
出席者
増田友之、久保田美子、高浪タカ子、吉野直人、立川英一、近藤ゆき子、板井一好、中屋敷徳、滝川康裕、佐藤 衛、小笠原邦昭、吉田研二、金 一、利部正裕、石島 健、中居賢司、菅井 有、佐藤 譲、金子能人、鈴木啓二朗、永田有希、熊谷章子、吉田、澤田
欠席者
藤岡知昭、中村眞一、堀内三郎、平 英一、前沢千早、中村元行、柏葉匡寛、別府高明、久保慶高、片岡 剛、高橋和宏、近田龍一郎、友安 信、石田陽治、小宅達郎、幅野 渉、小浜恵子、黒瀬奈緒子
審議事項:
1.前回議事録の確認
増田教授から前回議事録の報告があった。
2.予算配分についての報告
@各講座に対する予算配分案が別紙の通り示され、次回委員会で決定することが確認された。
A18年度オープンリサーチセンターに整備したい機器の調査について
各講座からの申請の締め切りは3月末日までとした。
3.平成17年度研究報告書と18年度研究計画書の提出状況について
未提出の講座は早急に提出していただくこととした。
4.PD採用面接
高橋正氏の採用面接が行われ、委員会として承認し教授会に上申することとした。
5.プロジェクトI進捗状況の報告
@臨床病理
Accept論文: 2、Revised paper、1、準備中、2。
慢性胃炎における腸上皮化生腺管と非腸上皮化生腺管の分子異常について解析を行っている。後者にも各染色体のLOHがみられることが分かった。詳細は現在実験中である。
A糖尿病代謝内科
TNF-αの遺伝子多型と動脈硬化因子との関係を検討中。
現在160名程の2型糖尿病患者から遺伝子解析の同意をもらい、第2病理で遺伝子解析中(97検体)。さらに症例を200人程度まで増やす予定。
B法医学
酸化損傷によって発生するカルボニル化タンパクの加齢に伴う生理的変化を検討中。剖検事例から採取された硝子体液が10歳代から80歳代まで収集され, 徐々に2次元電気泳動にてタンパクの分離を行っている。同条件での電気泳動後にイムノブロッティングにてカルボニル化タンパクを検出しているが,個体差の有無を確認するには至っていません。
C臨床検査医学
1.SNP解析
頚動脈疾患47例と健常例17例で動脈硬化関連の9 SNPsについて解析を行った。
解析結果については、現在、投稿中(脳外科 小笠原先生との居魚津研究)
2. 次年度(平成18年)に向けて下記の課題を提案して、進行中。
@薬剤代謝関連SNPの解析
従来、CYP2C9*2, CYP2C9*3の解析法を確立した。
さらに、ワーファリン感受性に関するVKORC1のSNP解析法を確立した。
平成18年度、ワーファリン服用例で、CYP2C9とVKORC1のSNPs解析の意義を検証する。
AMVAC療法(膀胱癌に対する多剤化学療法)での心筋傷害の評価
心磁計を用いてMVAC療法での心筋傷害の早期スクリーニングを行う。
さらに、MVAC療法におけるMTHFRの変異の意義を検討する(泌尿器科との共同研究)。
3. 論文投稿 2編(投稿中)
論文準備中 1編
D衛生学公衆衛生学
1.県北コホート研究
二戸、久慈および宮古の3保健医療圏において、高度な精度管理下に開始時調査を実施し、最終的に26,472名の参加同意者のコホート集団を設定した。このコホート研究の目的は、地域の脳卒中発症登録(岩手県、岩手県医師会実施)および岩手県心疾患発症登録協議会による心疾患発症登録と連携し、循環器疾患の発症リスクを明らかにすることにある。
2.透析患者の循環器疾患発症・死亡の要因に関する大規模コホート研究(KAREN Study)
岩手県県北地域と花巻・北上地域の全透析施設(26施設)のうち25施設の1506名の透析患者中1447名の面会を行い、1214名から参加同意を得てコホート集団を設定した。1年ごとにカルテ閲覧を中心とした追跡調査を実施している。
E生化学
XRCC1の多型と機能
XRCC1と相互作用するタンパク質の解析
XRCC1の核内での局在と機能の関係
の3点からDNA修復タンパク質XRCC1について調べている。
Publicationに関しては前回の報告から変化なし。
F耳鼻咽喉科
老人性難聴とミトコンドリア異常の調査
ミトコンドリアDNAシーケンスにより網羅的にSNPsの調査を行っている。
G第二内科
Revise2編、Accept1編
急性冠症候群、狭心症とコントロールの末梢血中血管内皮幹細胞におけるテロメア解析を行っている。
H第一内科
分化型肝細胞癌株を用いた人工肝臓による患者血漿の浄化に向けた基礎的実験を行っている.リアクター内での細胞の発育は電子顕微鏡的にも良好で酸素消費、グルコース消費も良好.しかし、アンモニア処理能がなく、分化の指標となる遺伝子発現を再検討中.
ガラクトース結合リポソームを用いて肝細胞特異的に薬物をデリバリーするシステムを検討中.薬物として細胞膜を通過できないグルタチオンを用い、グルタチオン枯渇が細胞障害の主因であるアセトアミノフェンを障害モデルにして検討中(血液内科石田先生との共同研究).in vitroで良好な結果であり、in vivoの検討を開始.
I第二病理
投稿準備中2編、投稿中1編、Revise1編
6.研究報告
@公衆衛生学 助教授 板井一好
1. 県北コホート研究 循環器疾患のリスク要因について
2. 透析コホート研究
3. 血中Fの研究
骨代謝との関連(閉経後の骨代謝、骨粗鬆症との関連について)
A薬理学 助手 近藤ゆき子
「抗原提示細胞系におけるニコチン受容体の発現とその機能」
本研究ではニコチン性アセチルコリン受容体が免疫系への神経性調節において抗原提示細胞系にどのように発現しどのような機能を持つかについて検討した。抗原提示細胞系のモデル細胞としてp53欠損マウス骨髄由来の培養細胞であるJAWSII細胞を用いて、ニコチン受容体の発現を調べた。
1.フローサイトメトリーでは蛍光色素で標識したα-bungarotoxin(BTX、ニコチン受容体に特異的に結合するヘビ毒素の一つ)を用いてBTXの特異的結合部位としてニコチン受容体を検出した。このニコチン受容体はLPSやTNF-αのような細胞の成熟化刺激により消失した。また、このニコチン受容体の発現にニコチン刺激は全く影響しなかった。さらにマウス樹状細胞に特徴的な細胞表面抗原の発現にもニコチンは全く影響しなかった。
2.細胞成熟化に伴うニコチン受容体の発現変化時における受容体構成サブユニットm-RNAの発現量の変化をリアルタイムRT-PCRを用いて検討した。その結果、細胞の成熟化刺激の前後でm-RNA発現量の減少したサブユニットはなく、フローサイトメトリーで得られた結果と相関するものではなかった。この点については再度検討する予定である。
3.この細胞の機能に対するニコチン受容体を介した刺激の影響を見るためにニコチンおよび細胞成熟化刺激によるサイトカイン分泌の変化を検討した。培養液中に分泌されたサイトカインは、ニコチンとLPSのいずれかまたはその両方で刺激し、その変化をサスペンションアレイシステムにて定量した。その結果、TNF-α、IL-1a、IL-1b、IL-3、IL-6、IL-10、IFN-γについて測定したがLPS処理の前後でニコチンはサイトカイン分泌に影響なかった。以上より、ニコチン受容体が発現している未成熟な状態でも細胞からのサイトカイン分泌にニコチンは影響がなかった。
これまでに単球系の細胞、特にマクロファージに発現しているニコチン受容体(特にα7受容体)については、迷走神経を介した免疫反応の抑制における関与とそのメカニズムが明らかになり、過剰な免疫系の反応が生体にダメージを及ぼす類の疾患の治療に役立つ可能性が報告されてきた。今回の私たちの結果から、単球が樹状細胞(抗原提示細胞)に分化することにより、逆に迷走神経系の支配を受けにくくなる可能性が考えられた。