岩手医科大学 先端医療研究センター 中間報告書(各テーマ用)
研究プロジェクト名 |
脳血管攣縮における内皮細胞—脱分化型平滑筋細胞相互作用の解析とその制御法の開発研究 |
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研究代表者 |
久保 慶高 |
所属 |
脳神経外科 |
共同研究者 |
吉田 研二 |
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キーワード(日本語)
脳血管攣縮 |
接着分子 |
ケモカイン |
Key Words (English)
Vasospasm |
Adhesion molecule |
Chemokine |
Endothelial cell |
Smooth muscle cell |
Subarachnoid hemorrhage |
【背景・目的】
くも膜下出血後に起こる脳血管攣縮は患者の予後を決定する重要な因子であるにも関わらず、その発生機序は未だ解明されていない。近年、攣縮血管における重要な病態として炎症が注目されているが、今回、我々は、脳血管攣縮に対する接着分子・ケモカインの関与に着目した。それに関連するtarget moleculeの同定及び、これらのmoleculeを標的とした治療法の確立を最終目的とする。
【方法】
対象は2004年2月から12月までに当施設に搬送され、治療が行われた脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者18人ならびに未破裂脳動脈瘤患者 4人。経過中に髄膜炎、肺炎、胆嚢炎などの炎症性疾患などに罹患した患者は除外した。破裂脳動脈瘤の内訳は前大脳動脈瘤2人、内頸動脈瘤6人、中大脳動脈瘤6人、椎骨脳底動脈瘤4人、未破裂脳動脈瘤では前交通動脈瘤2人、内頸動脈瘤1人、中大脳動脈瘤1人であった。血漿の L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、ICAM-1、VCAM-1、MCP-1、高感度CRPをくも膜下出血発症2日(48時間)以内と7日後、未破裂脳動脈瘤患者では術前と術後7日目に測定した。全例橈骨動脈から採血した後に速やかに3000回転で10分間遠心し、接着分子を測定するまで-80℃で冷凍保存した。本研究では患者本人または肉親者からインフォームドコンセントを得た。
【結果】
22人を以下の4群に分類した。A群(SVS+, AVS+)4人、B群(SVS-, AVS+)3人、C群(SVS-,AVS-)11人、D群(未破裂脳動脈瘤患者)4人。SVS(symptomatic vasospasm: 脳血管攣縮による脳虚血症状が出現)
AVS(angiographical vasospasm: 脳血管撮影またはCTAの所見で50%以上の脳血管攣縮があり)。 L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、ICAM-1、VCAM-1、MCP-1、高感度CRPの項目において、4群間でone-factor ANOVAのFisher’s PLSD法にて比較検討した。A群、B群、C群はD群に比べて血漿の L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、ICAM-1、VCAM-1、MCP-1、高感度CRPが有意に高かった。また、A群はB群、C群に比べて発症2日(48時間)以内のL-セレクチンと発症2日(48時間)以内と7日後のVCAM-1が有意に高かった。
【考察と展望】
L-セレクチンは白血球の血管内皮への捕捉、VCAM-1は白血球の血管内皮への強い接着・血管外への遊走に深く関与している接着分子である。白血球の捕捉・遊走による循環障害、白血球の脳内浸潤による脳組織障害によって、脳虚血症状が出現した可能性が示唆された。これらのmoleculeを標的とした治療法の確立が今後の課題である。
≪参考論文≫
(1) Frijns CJ. et al. Stroke 33:2115-2122, 2002
(2) Mocco J. et al. J Neurosurg 97:537-541, 2002
(3) Lin CL. et al. Surg Neurol 64:201-205, 2005