我が国の高齢化のスピードは急激で,「健康に老い,天寿を全うする」いわゆるsuccessful agingの達成は,医学・医療・福祉の領域はもとより,経済・社会構造の面からみても国家的最優先課題である.「健やかに老いる」ためには,再生医療やゲノム創薬学といった先端医療分野での開発研究に加え,老化の分子機構に関する基礎研究の成果をもとに,高齢期のquality of lifeを高める形での,老化制御法の開発も必要である.また,老化は遺伝的素因と環境要因によって形成される現象であり,遺伝子多型や環境要因から受けるDNA損傷が深く関与している.遺伝的素因を加味した,老化促進物質の排除による疫学的予防対策は,老年医学に関する新規先端医療の開発にも増して重要な課題である.
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